「最近、階段を上るだけで息が切れる」
「仕事が終わると疲れて何もしたくない」
「若い頃と同じように食べているのに太りやすくなった」
40代・50代になると、このような体の変化を感じる方も増えてきます。
「もう年齢だから仕方ない」と思うかもしれませんが、原因の一つとして考えたいのが運動不足です。
運動不足が続くと、単に体力が落ちるだけではありません。
筋力や体力の低下、体重増加だけでなく、将来的な生活習慣病などの健康リスクにも関係します。

最初から毎日1時間の運動をする必要はありません。
大切なのは、今より少しでも体を動かすことです。
この記事では、現役の保健体育教師・パーソナルトレーナーとして運動指導に携わっている私が、
- 運動不足が体に与える影響
- 運動不足を判断するヒント
- 40代・50代から注意したい理由
- どれくらい動けばよいのか
- 今日から始められる運動不足解消法
について、運動初心者にもわかりやすく解説します。
運動不足は「運動していない」だけではない
「運動不足」と聞くと、
「ジムに行っていない」
「スポーツをしていない」
という状態をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、健康づくりではスポーツや筋トレだけでなく、普段の生活でどれだけ体を動かしているかも重要です。
厚生労働省では、身体活動を大きく「生活活動」と「運動」に分けています。
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| 生活活動 | 通勤、歩行、買い物、掃除、家事、階段など |
| 運動 | ウォーキング、筋トレ、ジョギング、スポーツなど |
つまり、ジムに通っていなくても、通勤や買い物、家事などで体を動かすことは身体活動になります。
反対に「週末だけ運動しているから大丈夫」と思っていても、仕事中や自宅でほとんど座ったままという生活では、座位時間が長くなっている可能性があります。
運動不足が体に与える5つの影響
①体力が低下して疲れやすくなる
運動不足が続いたときに実感しやすい変化の一つが、体力の低下です。
例えば、
- 階段を上ると息が切れる
- 少し歩いただけで疲れる
- 休日に出かけるのがおっくうになる
- 以前より長時間動けなくなる
といった変化です。
普段から体を動かす機会が少ないと、心肺機能や全身持久力を使う場面も減っていきます。
すると「疲れるから動かない→さらに体力が落ちる→もっと動きたくなくなる」という悪循環にも入りやすくなります。



実際に私が運動指導をしている方からも、
「年齢のせいだと思っていたけれど、運動を始めたら以前より動くのが楽になった」
という声を聞くことがあります。
もちろん疲れの原因がすべて運動不足とは限りません。
それでも、以前より活動量が減っている方は、一度生活を振り返ってみる価値があります。
②筋力が低下して日常動作がつらくなる
体を動かす機会が減れば、筋肉を使う機会も減ります。
特に、
- お尻
- 太もも
- お腹
- 背中
など、立つ・歩く・姿勢を支えるために使う筋肉は日常生活にとって重要です。
筋力が低下すると、
- 「椅子から立つのが以前より大変」
- 「階段を避けるようになった」
- 「重い荷物を持つのがつらい」
など、普段の生活にも影響が出てきます。
③消費エネルギーが減り太りやすくなる
「食事量はそれほど変わっていないのに太ってきた」
という方は、食べる量だけではなく動く量にも目を向けてみましょう。
体重は単純に運動だけで決まるものではありませんが、日常生活で体を動かす量が減れば、当然消費するエネルギーも減ります。
例えば、
- 車移動が増えた
- 階段を使わなくなった
- デスクワークが増えた
- 休日も自宅で座って過ごすことが増えた
といった小さな変化でも、毎日の積み重ねでは大きな差になります。
④生活習慣病などの健康リスクが高まる
運動不足で特に注意したいのが、将来的な健康への影響です。
WHO(世界保健機関)は、十分な身体活動を行っている人と比較して、身体活動が不足している人では死亡リスクが20〜30%高いとしています。
また、定期的な身体活動は、
- 心血管疾患
- 高血圧
- 2型糖尿病
- 一部のがん
などのリスク低下と関連しています。
厚生労働省も、習慣的な身体活動は死亡や疾患発症のリスクを低減し、健康増進に有効であるとしています。
40代になると、健康診断で血圧・血糖・脂質などを指摘され始める方も少なくありません。
健康診断の数値が気になってきた方は、食生活だけでなく「普段どれくらい動いているか」も一度確認してみましょう。
⑤心や睡眠にも影響する
運動というと、筋肉やダイエットへの効果ばかり注目されがちですが、身体活動は心の健康にも関係しています。
WHOは、定期的な身体活動について、うつや不安の症状の軽減、睡眠や認知機能などにも良い影響が期待できるとしています。
仕事でストレスがたまっているときこそ、「疲れているから動かない」となりやすいものです。
しかし、必ずしも激しい運動をする必要はありません。
仕事のあとに10分歩く、休日に公園を散歩するなど、軽く体を動かすことが気分転換になることもあります。
あなたは大丈夫?運動不足チェック
運動不足かどうかは、運動時間だけでは判断できません。
次の項目をチェックしてみてください。
□ 1日の大半を座って過ごしている
□ 通勤や買い物でもほとんど歩かない
□ エレベーターやエスカレーターを使うことが多い
□ 階段を上ると以前より息が切れる
□ 休日も座って過ごす時間が長い
□ 定期的な運動習慣がない
□ 筋トレをほとんどしていない
□ 以前より疲れやすくなったと感じる
当てはまる数だけで病気や運動不足を診断できるものではありません。
ただし複数当てはまる場合は、普段の活動量を見直すきっかけにしてみてください。
特に大切なのは、
「運動しているか」だけでなく「1日を通してどれくらい動いているか」
を見ることです。
40代・50代こそ運動不足に注意したい理由
40代・50代になると、若い頃よりも運動する機会が減りやすくなります。
仕事では責任のある立場になり、デスクワークや会議が増える。
家庭では家事や子育て、介護などで自分の時間を確保しにくい。
その結果、
忙しい→運動しない→体力が落ちる→疲れる→さらに動かなくなる
という悪循環が起こりやすくなります。



私が40代以降の方を指導するときも、最初から高い運動目標を設定することはおすすめしていません。
大切なのは、「若い頃の体力に戻すために頑張る」ことではなく、
これから先も自分の足で動き、好きなことを楽しめる体をつくること
だと考えています。
40代から運動を始める方法については「40代から運動をはじめるコツ」でも詳しく解説しています。
運動不足を解消するための目安
では、どのくらい体を動かせばよいのでしょうか。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人について次のような目安が示されています。
| 項目 | 成人の目安 |
| 身体活動 | 歩行または同等以上を1日60分以上 |
| 歩数の目安 | 約8,000歩以上/日 |
| 運動 | 息が弾み汗をかく程度を週60分以上 |
| 筋トレ | 週2〜3日 |
| 座位行動 | 座りっぱなしが長くなりすぎないようにする |
ここを見ると、「1日60分なんて無理……」と思うかもしれません。
しかし、この60分には通勤・買い物・家事などの生活活動も含まれます。
さらに、厚生労働省が最初に示している重要なメッセージが、
「今よりも少しでも多く身体を動かす」
ことです。



最初から8,000歩を達成する必要はありません。
現在3,000歩なら、まず3,500歩。
運動習慣がゼロなら、まず5〜10分歩いてみる。
そのように、現在地から少しずつ増やしていく考え方が大切です(^^)
今日からできる運動不足解消法5選
①まずは「プラス10分」動いてみる
運動不足を解消するために、いきなり生活を大きく変える必要はありません。
まずは今より10分多く動くことから始めてみましょう。
例えば、
- 昼休みに10分歩く
- 一駅手前で降りる
- 買い物で少し遠回りする
- 犬の散歩を10分延ばす
- 夕食後に近所を歩く
などで十分です。
②30分以上座ったら一度立つ
デスクワークの方は、運動だけでなく座りっぱなしにも注意しましょう。
厚生労働省では、長時間の座位行動をできる限り頻繁に中断することの重要性も示しています。
例えば、
- トイレに立つ
- 飲み物を取りに行く
- コピーや印刷で歩く
- 立って伸びをする
- その場で軽く足踏みする
程度でも構いません。
③ウォーキングから始める
運動初心者に私が特におすすめしているのがウォーキングです。
理由はシンプルで、
- 特別な技術がいらない
- 道具がほとんどいらない
- 強度を調整しやすい
- 日常生活に取り入れやすい
からです。
④週2〜3回の簡単な筋トレを取り入れる
歩く習慣ができてきたら、筋トレも組み合わせてみましょう。
おすすめは、
- スクワット
- 椅子からの立ち座り
- 壁を使った腕立て伏せ
- かかと上げ
など、自宅でできる簡単な種目です。
特に運動初心者は、「30分筋トレしなければ意味がない」と考える必要はありません。
⑤続けられる運動を選ぶ
運動不足解消で一番大切なのは、1回頑張ることではなく続けることです。
ウォーキングが苦手なら、
- 自転車
- 水泳
- テニス
- ダンス
- 自宅トレーニング
- ラジオ体操
などでも構いません。
運動不足解消で注意したい3つのこと
①最初から頑張りすぎない
久しぶりに運動すると、
- 「今日から毎日1時間歩く!」
- 「週5回ジムに行く!」
と気合いが入りがちです。
しかし、体が運動に慣れていない状態で急激に負荷を増やすと、強い筋肉痛や関節の痛みにつながり、結局続かなくなることがあります。
②痛みを我慢しない
筋肉が少し疲れる感覚と、関節などの痛みは別物です。
膝や腰などに強い痛みが出た場合は、無理をして続けないようにしましょう。
③体調が悪い日は休む
運動は健康のために行うものです。
発熱、強いだるさ、胸の痛み、普段と違う息苦しさなどがあるときに、無理をして運動する必要はありません。
運動不足についてよくある質問
まとめ|まずは「今より少し動く」ことから始めよう
運動不足は、単に「体力が落ちる」だけの問題ではありません。
運動不足が続くことで、
- 体力が低下して疲れやすくなる
- 筋力が低下する
- 消費エネルギーが減る
- 生活習慣病などの健康リスクが高まる
- 心や睡眠にも影響する
といったさまざまな影響が考えられます。
だからといって、明日から毎日1時間運動する必要はありません。



体育教師・パーソナルトレーナーとして私が特に伝えたいのは、「運動不足だから運動しなければ」と自分を追い込むより、今より少し動くことから始めてほしいということです。
・5分歩く。
・階段を使う。
・仕事中に一度立つ。
・自宅でスクワットを10回する。
そんな小さな行動でも、ゼロとは大きな違いがあります。
そして慣れてきたら、ウォーキングや筋トレなど、自分に合った運動へ少しずつ広げていきましょう。
今日できることを一つ選んで、一生動ける体づくりの第一歩にしていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考にした公的機関・論文
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 推奨シート:成人版」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「筋力トレーニングについて」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動による疾患等の発症予防・改善のメカニズム」
- World Health Organization(WHO)「Physical activity」
- World Health Organization(WHO)「WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour」


コメント