「変形性膝関節症と診断されたけれど、筋トレをしても大丈夫?」
「スクワットをすると、膝がさらにすり減りそうで怖い……」
「膝が痛いなら、なるべく動かさない方がいいのでは?」
このような不安を感じていませんか?
結論からお伝えすると、変形性膝関節症だからという理由だけで、筋トレをすべて避ける必要があるとは言えません。
2026年に発表された大規模なシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、変形性膝関節症に対する筋力トレーニングについて120試験・10,253人のデータが検討されました。

初期〜一般的な変形性膝関節症では、筋トレによって筋力だけでなく、歩行能力、身体機能、痛み、こわばり、QOLなどの改善が確認されています。
一方で、「膝が痛くても我慢して重いスクワットをすればよい」という意味ではありません。
膝の状態に合わせて、運動の種類・負荷・可動域などを調整することが大切です。
この記事では、現役の保健体育教師・パーソナルトレーナーとして運動指導に携わる立場から、最新研究をもとに変形性膝関節症と筋トレの関係を分かりやすく解説します。
- 変形性膝関節症でも筋トレをしてよいのか
- 最新研究で確認された筋トレの効果
- 筋トレで膝が悪化する可能性
- 膝痛がある人の負荷調整の考え方
- 運動を中止して受診した方がよいケース
- 40代・50代が無理なく運動を始める方法
結論|変形性膝関節症だから筋トレ禁止、ではない
まず押さえておきたいのは、
変形性膝関節症=安静にして膝を使わない方がよい
とは限らないことです。
運動療法にはさまざまな方法がありますが、その一つが筋力トレーニングです。
特に重要なのが、
- 太ももの前側にある大腿四頭筋
- お尻周辺の筋肉
- 股関節周囲の筋肉
などです。
膝だけを見るのではなく、立つ・歩く・階段を上るといった動作を支える下半身全体を考えていきます。
つまり、「膝を守るために何もしない」のではなく、「膝の状態に合った運動を行う」という考え方が大切です。
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨や周囲の組織などに変化が生じ、痛みや動かしにくさなどが現れる病気です。
代表的な症状として、
- 立ち上がるときに膝が痛む
- 歩き始めに痛む
- 階段の上り下りがつらい
- 膝が曲げ伸ばししにくい
- 膝が腫れる
- 症状が進むと歩行が難しくなる
などがあります。
ここで注意したいのが、痛みがあると活動量が減りやすいことです。
動かなくなる
↓
脚の筋力が低下する
↓
立つ・歩くことがさらに大変になる
↓
ますます動かなくなる
という悪循環に陥る可能性があります。
そのため、痛みを無視して運動するのも、怖がってまったく動かなくなるのも適切とは限りません。
2026年の研究|120試験・10,253人を分析
2026年に『Annals of Physical and Rehabilitation Medicine』で公表されたシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、変形性膝関節症に対する筋力トレーニングについて、
120試験・10,253人
という非常に大規模なデータが統合されました。
研究は、
- 初期〜一般的な変形性膝関節症:88試験
- 人工膝関節置換術前:13試験
- 人工膝関節置換術後:19試験
に分けて検討されています。
初期〜一般的な変形性膝関節症では幅広い改善
対照群と比較すると、筋力トレーニングによって、
- 移動能力
- 歩行能力
- 膝伸展筋力
- 痛み
- こわばり・症状
- 身体機能
- QOL
などが改善しました。
主要な身体機能アウトカムについては、GRADEで中〜高程度の確実性と評価されています。
手術前後では結果が異なる
一方、すべての段階ですべての項目が改善したわけではありません。
人工膝関節置換術前では膝伸展筋力の改善が確認された一方、痛みなどの患者報告アウトカムでは明確な効果が確認されなかった項目もあります。
術後では移動能力や膝痛などへの効果が確認されました。
筋トレで期待できる5つのメリット
1.太ももの筋力を高める
変形性膝関節症では、膝を伸ばす大腿四頭筋の筋力が重要です。
2026年の研究でも、初期の変形性膝関節症では膝伸展筋力の改善が確認されています。
脚の筋力は、立ち上がる、歩く、階段を上るなど日常生活のさまざまな場面で使います。
2.歩行・移動能力の改善につながる
筋トレの目的は、筋肉を大きくすることだけではありません。
40代・50代以降の健康づくりでは、「日常生活を楽に動ける体を維持すること」も重要な目的です。
今回の研究では、歩行能力や移動能力にも改善が確認されています。
3.痛みの改善が期待できる
「痛い膝を動かしたら、もっと痛くなるのでは?」
思うかもしれません。
しかし、初期〜一般的な変形性膝関節症では、筋トレによる痛みの改善も確認されています。
ただし、これは運動中の痛みを無視してよいという意味ではありません。
4.こわばりや身体機能の改善が期待できる
変形性膝関節症では、痛みだけでなく、
- 朝に膝が動かしにくい
- 立ち上がりにくい
- 以前より歩けなくなった
といった問題が起こります。
5.QOLの改善につながる可能性がある
膝が痛くなると、
- 旅行に行かなくなる
- 外出が減る
- 趣味を諦める
- 階段を避ける
- 家族との外出が減る
など、生活そのものに影響することがあります。
筋トレの最終目的は「筋肉をつけること」ではありません。
「筋トレは安全」を誤解してはいけない
2026年のレビューでは、筋トレによって有害事象が明確に増えるという結果は確認されませんでした。
これは筋トレを検討するうえで重要な結果です。
しかし、「どんな膝の状態でも、どんな筋トレをしても安全」という意味ではありません。
研究で行われているのは、一定の条件で管理されたトレーニングです。
実際の運動では、
- 痛みの程度
- 関節可動域
- 筋力
- 運動経験
- 病期
- 手術歴
- 他の疾患
などが人によって違います。
膝が痛い人が筋トレするときの5つのポイント
1.最初から重い負荷を使わない
筋トレというとバーベルスクワットを想像するかもしれませんが、必ずしも高重量は必要ありません。
例えば、
- 椅子からの立ち座り
- 浅いスクワット
- 脚を伸ばす運動
- ヒップリフト
- チューブを使った運動
など、負荷の低い方法から始められます。
2.可動域を調整する
深くしゃがむと痛い人が、無理に深いスクワットを行う必要はありません。
例えば椅子を利用して、
痛みが強くならない範囲まで座る→立つ
ところから始める方法があります。
慣れてきたら少しずつ動く範囲を広げます。
3.回数やセット数を少しずつ増やす
初日から、
「スクワット100回!」
のようなメニューは必要ありません。
運動経験が少ない人なら、少ない回数・セット数から始め、翌日以降の膝の状態を確認しながら調整します。
4.膝だけでなくお尻なども鍛える
下半身の動きには膝だけでなく、股関節や足関節も関係します。
そのため、
- 大腿四頭筋
- 臀部
- ハムストリングス
- ふくらはぎ
などをバランスよく鍛えることを考えましょう。
5.器具を使って負荷を調整する
自重運動に慣れてきたら、トレーニングチューブを利用する方法もあります。
チューブは負荷の違う製品を選びやすく、自宅でも使いやすいのがメリットです。
こんな症状があるときは運動より医療機関を優先
筋トレが有効だからといって、すべての膝痛を自己判断で運動してよいわけではありません。
例えば、
- 急に強く腫れた
- 転倒やスポーツなど明確な外傷後から痛い
- 膝が引っかかり動かせない
- 急激に歩けなくなった
- 強い痛みが続いている
- 運動するほど症状が明らかに悪化する
といった場合は、トレーニングを続けることより、まず整形外科などで原因を確認することを優先してください。
変形性膝関節症だと思っていても、膝痛の原因が別にある可能性があります。
「運動すれば治る」と自己判断しないことも、安全に運動を続けるために大切です。
40代・50代が自宅で始めるならどうする?
「運動した方がいいのは分かった。でも、何から始めればいいの?」
という方は、まず特別な器具を買う必要はありません。
例えば、
STEP1 椅子からの立ち座り
安定した椅子から、ゆっくり立って座ります。
まずは無理のない回数から始めます。
STEP2 ヒップリフト
仰向けで膝を曲げ、お尻を持ち上げます。
膝だけに負担を集中させず、臀部を鍛えられます。
STEP3 軽いチューブ運動
慣れてきたらチューブなどを利用して少しずつ負荷を加えます。
ポイントは、
「たくさんやる」より「続けられる負荷を探す」ことです。
痛みや翌日の状態を確認しながら調整しましょう。
変形性膝関節症と筋トレに関するよくある質問
まとめ|体育教師×トレーナーとしての結論
2026年の大規模なシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、変形性膝関節症に対する筋力トレーニングについて120試験・10,253人が検討されました。
初期〜一般的な変形性膝関節症では、
- 移動能力
- 歩行能力
- 膝伸展筋力
- 痛み
- こわばり
- 身体機能
- QOL
などへの改善が確認されています。
さらに、筋トレによって有害事象が明確に増えるという結果も確認されませんでした。
そのため、「変形性膝関節症だから筋トレは危険」と一律に考える必要はありません。
一方で、「痛くても我慢して鍛えればいい」という考え方も違います。



体育教師・パーソナルトレーナーとして大切だと考えているのは、
「できない運動を無理に行う」のではなく、「今の自分にできる運動を探す」ことです。
スクワットが痛いなら、浅くする。
自重が重いなら、椅子を使う。
負荷を増やしたければ、軽いチューブから試す。
そして膝の状態を確認しながら、少しずつできることを増やしていきます。
筋トレの目的は、重いものを持ち上げることではありません。
10年後、20年後も自分の脚で歩き、旅行や趣味、家族との時間を楽しめる体をつくること。
そのために、膝の状態に合った運動を上手に取り入れていきましょう(^^)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考にした公的機関・論文
Brown RCC, et al.(2026)
Efficacy and safety of resistance training for knee osteoarthritis and subsequent knee replacement: A systematic review and meta-analysis.
Annals of Physical and Rehabilitation Medicine. 2026;69(5):102122.
DOI:10.1016/j.rehab.2026.102122
120試験・10,253人を対象とし、変形性膝関節症の各段階における筋力トレーニングの有効性と安全性を検討したシステマティックレビュー・メタアナリシス。
日本整形外科学会
変形性膝関節症診療ガイドライン
運動療法について、鎮痛、身体機能改善、日常生活機能改善の効果を認め、実施することを強く推奨。
日本整形外科学会
「変形性膝関節症」一般向け解説
大腿四頭筋強化訓練や関節可動域改善訓練などを、変形性膝関節症に対する運動器リハビリテーションとして紹介。


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