「脂質を食べると太るのでは?」
「ダイエット中は、油をできるだけ減らした方がいい?」
このように考えている方は多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、脂質は太るだけの悪者ではなく、体を動かし、細胞やホルモンなどの材料になる大切な栄養素です。
ただし、脂質は1g当たり約9kcalと、タンパク質や炭水化物の約4kcalより高エネルギーです。そのため、「抜く」のではなく、量と種類を整えることが重要です。

私は現役の保健体育教師・パーソナルトレーナーとして、40〜50代の方から「脂質はどこまで減らせばよいですか?」という相談を受けます。
この記事では、脂質の役割、1日の摂取量、脂肪酸の違い、食品の選び方まで、運動初心者にも分かる言葉で解説します。
- 脂質と体脂肪、血中脂質の違い
- 脂質を食べると太るのか
- 1日に摂りたい脂質量の計算方法
- 飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の違い
- 良質な脂質を含む食品
- ダイエット中の注意点
脂質とは?三大栄養素の1つ
脂質は、タンパク質・炭水化物と並ぶ三大栄養素の1つです。
「脂質=油」と思われがちですが、調理油だけではありません。
肉、魚、卵、乳製品、大豆製品、ナッツ、お菓子など、さまざまな食品に含まれています。
脂質の大きな特徴は、1g当たり約9kcalのエネルギーを持つことです。
同じ1gでも、タンパク質と炭水化物は約4kcalです。脂質は少量でも多くのエネルギーを摂れるため、体に必要な一方、気づかないうちに摂りすぎやすい栄養素でもあります。
脂質・体脂肪・血中脂質は同じではない
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 食事の脂質 | 食品に含まれる栄養素 |
| 体脂肪 | 余ったエネルギーを体内へ蓄えたもの |
| 血中脂質 | 血液中のコレステロールや中性脂肪など |
食事の脂質は体脂肪や血中脂質に関係しますが、すべて同じものではありません。
脂質が体で果たす5つの役割
1.エネルギー源になる
脂質は、安静時や軽〜中程度の運動中にも利用されるエネルギー源です。
ただし、「有酸素運動では脂質だけが使われる」という意味ではありません。運動の強度、時間、食事状況、体力などによって、糖質と脂質の利用割合は変わります。強度が高くなるほど、糖質の利用割合が増える傾向があります。
2.細胞膜や神経組織の材料になる
私たちの体は多くの細胞でできており、その細胞を包む膜の主な材料の1つが脂質です。
脂質は、脳や神経を含む体の組織をつくり、正常な働きを保つために欠かせません。
3.ホルモンや胆汁酸の材料になる
脂質の一種であるコレステロールは、ステロイドホルモンや胆汁酸などの材料になります。
コレステロールは「悪いもの」と思われがちですが、体に必要な成分です。問題になるのは、血液中のLDLコレステロールなどが高い状態を放置することです。
4.脂溶性ビタミンの吸収を助ける
ビタミンA・D・E・Kは、油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」です。
5.必須脂肪酸を補給する
n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸の一部は、体内で十分に作れないため、食事から摂る必要があります。これを必須脂肪酸といいます。
脂質を食べると太る?本当の仕組み
脂質を食べたことだけで太るとは限りません。
体脂肪が増える基本的な仕組みは、摂取エネルギーが消費エネルギーを継続的に上回ることです。
ただし、脂質は1g当たり約9kcalなので、量が少なくてもカロリーが高くなりやすい特徴があります。
例えば、次のような「見えにくい脂質」が重なると、本人が思っている以上に摂取量が増えます。
- 肉の脂身や鶏皮
- ドレッシングやマヨネーズ
- 菓子パンや洋菓子
- チーズや生クリーム
- 揚げ物
- スナック菓子
- ナッツを大袋のまま食べる
「揚げ物と炭水化物を一緒に食べると脂肪になりやすい」という説明は単純化しすぎです。
揚げ物とご飯の組み合わせが問題になりやすいのは、脂質と炭水化物が混ざること自体よりも、おいしく食べやすく、総カロリーが高くなりやすいからです。
1日の脂質摂取量は何g?
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人の脂質は、1日の総エネルギー摂取量の20〜30%が目標量です。
「全員が1日50g」という決まりではありません。必要なエネルギー量によって、脂質のグラム数も変わります。
脂質量の計算式
1日の摂取カロリー×20〜30%÷9=脂質の目安量(g)
例えば、1日2000kcalの場合は次のように計算します。
- 下限:2000×0.20÷9=約44g
- 上限:2000×0.30÷9=約67g
カロリー別の脂質量早見表
| 1日の摂取カロリー | 脂質20% | 脂質30% | 目安範囲 |
|---|---|---|---|
| 1600kcal | 約36g | 約53g | 約36〜53g |
| 1800kcal | 40g | 60g | 40〜60g |
| 2000kcal | 約44g | 約67g | 約44〜67g |
| 2200kcal | 約49g | 約73g | 約49〜73g |
| 2500kcal | 約56g | 約83g | 約56〜83g |
飽和脂肪酸は7%エネルギー以下が目標
同基準では、成人の飽和脂肪酸は総エネルギーの7%以下が目標です。
2000kcalの場合は、約16g以下に相当します。
脂質の種類と違い
脂質は「良い・悪い」と単純に分けるより、脂肪酸の種類と量、置き換える食品を考えることが大切です。
| 種類 | 主な食品 | 基本的な考え方 |
|---|---|---|
| 飽和脂肪酸 | 肉の脂身、バター、生クリーム、チーズ、ココナッツ油など | 摂りすぎが続かないようにする |
| 一価不飽和脂肪酸 | オリーブ油、菜種油、アボカド、ナッツなど | 飽和脂肪酸との置き換えに活用 |
| n-6系脂肪酸 | 大豆油、ごま油、ナッツ、種子など | 必須脂肪酸。摂りすぎ・不足の両極端を避ける |
| n-3系脂肪酸 | 青魚、えごま油、アマニ油、くるみなど | 必須脂肪酸を含む。食品から取り入れる |
| トランス脂肪酸 | 一部の加工油脂、菓子、揚げ物、反すう動物由来食品など | できるだけ少なくする |
不飽和脂肪酸は「足す」より「置き換える」
健康のためにオリーブ油やナッツを追加しても、今までの食事を変えなければ、総カロリーが増えるだけになることがあります。
おすすめは次のような置き換えです。
- バターを多く使う料理の一部を植物油へ変える
- 脂身の多い肉が続くときは魚や大豆製品へ変える
- スナック菓子を毎日食べているなら、量を決めた無塩ナッツへ変える
トランス脂肪酸は商品名だけで判断しない
WHOの2023年ガイドラインは、トランス脂肪酸を総エネルギー摂取量の1%未満、できるだけ少なくするよう勧めています。
一方、農林水産省の解説では、日本人の大多数は1%未満で、通常の食生活では健康への影響は小さいと評価されています。
ただし、菓子類や揚げ物などに偏った食生活では、摂取量が多くなる可能性があります。
食事のコレステロールはどう考える?
健康な人に対して、食事中コレステロールの一律の上限は設定されていません。
ただし、脂質異常症の重症化予防では、1日200mg未満に留めることが望ましい場合があります。
良質な脂質を含む食品と摂りすぎに注意したい食品
「良質な脂質」とは厳密な栄養学用語ではありません。この記事では、主に不飽和脂肪酸を含み、他の栄養素も摂りやすい食品という意味で使います。
日常へ取り入れたい食品
- サバ、イワシ、サンマ、鮭などの魚
- 豆腐、納豆、大豆
- アーモンド、くるみなどの無塩ナッツ
- ごま、アマニ、えごまなどの種子
- オリーブ油、菜種油
- アボカド
- 卵
量や頻度を確認したい食品
- 脂身の多い肉、鶏皮
- バター、生クリーム
- 脂肪の多いチーズ
- 揚げ物
- 菓子パン、ケーキ、クッキー
- スナック菓子
- ベーコン、ソーセージなどの加工肉
- ドレッシングやマヨネーズのかけすぎ
40〜50代が脂質を上手に摂る5つのコツ
1.肉だけに偏らず、魚や大豆製品も選ぶ
最初から毎日変える必要はありません。
脂身の多い肉料理が続いている方は、まず週に2回程度、魚や大豆製品を主菜にすることから始めましょう。
2.油はボトルから直接注がず、計量する
油は見た目以上にカロリーがあります。
小さじや大さじで量を確認すると、味を大きく変えずに摂りすぎを防ぎやすくなります。
3.ナッツは袋のまま食べない
ナッツは不飽和脂肪酸や食物繊維を含みますが、食べやすくカロリーも高めです。
10〜20g程度を小皿へ出し、残りはしまうと食べすぎを防ぎやすくなります。
4.栄養成分表示の「1食当たり」を見る
加工食品を選ぶときは、次の順番で確認しましょう。
- 何g・何個を1食としているか
- エネルギー
- 脂質
- タンパク質
- 食塩相当量
「脂質10g」と書かれていても、1袋に2食分入っていれば、全部食べると20gです。
5.1食ではなく、1週間で整える
外食や会食で脂質が多くなる日はあります。
その1食だけで失敗と考えず、次の食事で揚げ物を避ける、魚や豆腐を選ぶ、野菜を増やすなど、数日単位で調整しましょう。
今日からできる置き換え例
| これまでの選び方 | 置き換え例 |
|---|---|
| 菓子パンと甘い飲み物だけ | ご飯またはパン+卵+ヨーグルト+果物 |
| 揚げ物弁当 | 焼き魚または蒸し鶏の弁当 |
| ポテトチップスを1袋 | 小皿に出した無塩ナッツ、ヨーグルト、果物 |
| クリーム系パスタ | トマト系・魚介系パスタ+サラダ |
| 肉料理が毎日続く | 魚・豆腐・納豆を主菜にする日をつくる |
脂質の摂りすぎ・不足で注意したいこと
摂りすぎが続く場合
- 総摂取カロリーが増え、体重や体脂肪が増えやすい
- 飽和脂肪酸が多い食事では、LDLコレステロールが高くなる要因になる
- 揚げ物、菓子、加工肉へ偏ると、塩分や糖質も増えやすい
- 食事全体のバランスが崩れやすい
極端に減らす場合
- 必須脂肪酸を十分に摂りにくくなる
- 脂溶性ビタミンを含む食事の吸収へ影響する可能性がある
- 食事量全体も少ない場合、エネルギー不足や体調不良につながる可能性がある
- 厳しい制限がストレスとなり、反動の過食につながることがある
「脂質不足なら必ずこの症状が出る」と自己診断することはできません。
健康診断で脂質を指摘されたら
日本動脈硬化学会の「脂質異常症診療のQ&A」では、脂質異常症を疑うスクリーニング基準として、主に次の値を示しています。
- LDLコレステロール:140mg/dL以上
- HDLコレステロール:40mg/dL未満
- 中性脂肪:空腹時150mg/dL以上
- 中性脂肪:随時175mg/dL以上
これらは「超えたら全員が同じ治療」という数値ではありません。
この方法が向いている人・自己判断で進めない方がよい人
この記事の方法が向いている人
- 健康な成人で、食生活を見直したい人
- 40〜50代で体重管理を始めたい人
- 脂質を悪者にせず、適量を知りたい人
- PFCバランスを学び始めた人
- 魚・大豆・ナッツなどへの置き換えを無理なく続けたい人
自己判断だけで進めない方がよい人
- 脂質異常症、糖尿病、肝臓・腎臓・膵臓・胆のうの病気がある人
- 心筋梗塞や脳卒中などの既往がある人
- 医師から個別の食事制限を受けている人
- 妊娠・授乳中で栄養管理が必要な人
- 極端な減量で体調を崩している人
- サプリメントと薬の併用が心配な人
体育教師×トレーナーとしての実践と結論
指導現場でよく見かけるのは、次の2つの極端な考え方です。
- 油はすべて太ると思い、必要な脂質まで避ける
- オリーブ油やナッツは体に良いと思い、量を気にせず食べる
どちらもおすすめできません。



私自身、ボディコンテストに向けた減量ではPFCバランスを記録します。
体重を落としたい時期でも、脂質をゼロにはせず、全卵や魚などから必要量を確保します。
一方、脂質をかなり低くした時期に、便通や食事の満足感が乱れた経験もあります。
脂質だけが原因とは断定できず、食物繊維、水分、食事量なども関係しますが、1つの栄養素を削りすぎず、食事全体で考える大切さを改めて感じました。
体育教師×トレーナーとしての結論は、「脂質は抜くのではなく、量を把握し、飽和脂肪酸の多い食品の一部を魚・大豆・植物油・ナッツなどへ置き換える」です。
脂質に関するよくある質問
まとめ|脂質は「量」と「置き換え」で整えよう
脂質は、体に必要な三大栄養素の1つです。
- 脂質は1g当たり約9kcal
- 細胞膜、ホルモン、胆汁酸などの材料になる
- 脂溶性ビタミンの吸収を助ける
- 成人の脂質は総エネルギーの20〜30%が目標
- 飽和脂肪酸は総エネルギーの7%以下が目標
- 体脂肪増加の基本は、継続的なエネルギー過剰
- オリーブ油やナッツも無制限ではない
- 肉の脂や菓子を、魚・大豆・植物油・ナッツへ置き換える
- 健康診断で異常を指摘されたら、自己判断だけで進めない
まずは今日、次の3つから1つ実践してみてください。
- 油を計量して使う
- ナッツを袋ではなく小皿へ出す
- 次の主菜を魚または大豆製品にする
脂質だけでなく、食生活全体を整えたい方へ
健康づくりでは、脂質だけを変えても十分ではありません。タンパク質、炭水化物、野菜、水分、食事時間まで含めて整えることが大切です。
毎日の食事へ取り入れやすい脂質を探す
青魚を毎回調理するのが難しい方は、サバの水煮缶、無塩ミックスナッツ、小容量のオリーブ油など、続けやすい食品から始める方法があります。
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※不飽和脂肪酸を含む食品でもカロリーはあります。今の食事へ無制限に追加せず、肉の脂、菓子、揚げ物などとの置き換えに利用してください。
忙しくて毎食の脂質量を計算できない方へ
仕事や家事で食事を準備する時間がない方は、カロリー・タンパク質・脂質が表示された冷凍宅配食を利用する方法もあります▶マッスルデリ
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- WHO「Saturated fatty acid and trans-fatty acid intake for adults and children」
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
- 日本動脈硬化学会「脂質異常症診療のQ&A」
- 農林水産省「すぐにわかるトランス脂肪酸」


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