「痛いから運動しない」は必ずしも正しくない|痛みがあるときの運動の考え方

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腰が痛い。
膝に違和感がある。
肩を動かすと少し痛む。

こんなとき、
「今日は運動しないほうがいいかな……」
と考えた経験はないでしょうか?

もちろん、ケガをした直後や強い痛みがあるときなど、運動を休んだほうがよい場合はあります。

しかし、「痛みがある=運動してはいけない」とは限りません。

近年では、慢性的な痛みに対して適切に調整された運動そのものが、痛みを管理する重要な方法の一つと考えられています。2026年には、22万人以上を含む非常に大規模な研究でも、運動による痛みの軽減効果が報告されました。

大切なのは、「動くか、休むか」の2択ではなく、その日の状態に合わせて運動を調整すること。

今回は体育教師・パーソナルトレーナーの視点から、40〜50代の運動初心者にも分かるように「痛みと運動」の考え方を解説します。

この記事で分かること
  • 痛いときに運動してもよいのか
  • 最新研究で分かった運動と痛みの関係
  • 「痛い=安静」とは限らない理由
  • 痛みがあるときの運動の調整方法
  • 運動より受診を優先したほうがよいケース

目次

痛いときは運動を休んだほうがいい?

結論からいうと、

痛みがあるという理由だけで、すべての運動を中止する必要があるとは限りません。

  • 「腰が痛いから安静」
  • 「膝が痛いから歩かない」
  • 「肩が痛いから運動禁止」

このように単純には判断できないからです。

痛みの原因や程度、いつから続いているのかによって対応は変わります。

特に考えておきたいのが、急に起こった痛みと長く続いている痛みでは、同じ「痛い」でも意味が違うということです。

転倒して膝を強く打った直後と、数か月前から膝に軽い痛みが続いている状態では、当然対応も違います。

「痛いかどうか」だけではなく、「なぜ痛いのか」「どの程度なのか」「どう変化しているのか」まで考える必要があります。


22万人以上を調べた研究で分かった「運動と痛み」の関係

2026年7月、医学誌『PAIN Reports』に、運動と痛みの関係を調べた非常に大規模なアンブレラレビューが掲載されました。アンブレラレビューとは、複数のシステマティックレビューやメタアナリシスをさらにまとめて検討する研究方法です。

今回の研究では、

項目規模
システマティックレビュー157件
RCT(ランダム化比較試験)2,736件
参加者221,279人

という非常に多くの研究がまとめられました。

運動によって痛みは有意に軽減した

分析の結果、運動を行ったグループでは、対照群と比較して痛みが有意に軽減していました。

さらに興味深いのは、効果が特定の痛みだけに限定されなかったことです。
研究では、

  • 筋骨格系
  • 神経系
  • 炎症性疾患
  • がん関連

など、幅広い状態で運動による痛みの軽減が確認されています。

運動についても、

  • 有酸素運動
  • 筋力トレーニング
  • ヨガ
  • ピラティス
  • 太極拳

など、複数の方法で効果が確認されました。

つまり、「痛みがある人は運動しないほうがいい」という考え方では説明できない結果です。

ただし、この研究のエビデンスの確実性はGRADE評価で中等度でした。

非常に大規模な研究ではありますが、「運動すればどんな痛みでも治る」という研究ではないことは、しっかり押さえておきましょう。


激しく運動すればいいわけではない

ここでもう一つ重要な結果があります。

研究では、低強度の運動や12週間未満のプログラムで、より大きな効果が観察されました。

これは、「痛みに効かせるためには、頑張って激しく運動しなければいけない」わけではないことを示唆しています。

  • 痛いのを我慢してスクワットをする。
  • 無理して長時間歩く。
  • 痛みが強くても「運動が効くから」と続ける。

こうした方法を勧める結果ではありません。

むしろ運動初心者にとって重要なのは、無理なく実施できる範囲から始めることです。


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なぜ「痛い=安静」とは限らないのか

痛みは身体を守るための大切な警告信号です。

そのため、「痛いなら動かさないほうが安全」と考えること自体は自然です。

しかし、慢性的な痛みでは話が少し変わります。

慢性的な痛みでは運動が管理手段になることがある

一般的に3か月を超えて持続・反復する痛みは「慢性疼痛」として扱われます。

慢性的な痛みでは、必ずしも「痛みの強さ=組織の損傷の大きさ」とは限りません。

そのため、痛みをゼロにしてから活動を再開するのではなく、状態に応じて身体活動を維持していくことが重要になるケースがあります。

実際、英国NICEの慢性一次性疼痛のガイドラインでも、個人のニーズ・能力などを考慮した運動プログラムが推奨され、長期的な健康のため身体活動を続けることが勧められています。

つまり、運動は「痛みがなくなった人だけが行うもの」ではなく、場合によっては痛みを管理する手段の一つにもなるということです。


動かないことにもデメリットがある

「痛いから休む」こと自体が悪いわけではありません。

問題なのは、必要以上に活動量を落とした状態が長く続くことです。

たとえば、

膝が痛い

歩かなくなる

脚の筋力や体力が落ちる

以前より動くのが大変になる

さらに活動量が減る

という悪循環に陥る可能性があります。

40〜50代以降は、筋力や体力を維持するためにも定期的な身体活動が重要です。

だからこそ、「痛いから全部やめる」のではなく、「今できる運動は何か?」と考えることが大切になります。


ただし「痛くても運動すればいい」は危険

ここは今回の記事で最も誤解してほしくないポイントです。

今回の研究結果は、「痛くても我慢して運動しよう」という意味ではありません。

痛みの原因にはさまざまなものがあります。

ケガや病気など、医療的な評価や治療が必要なケースも当然あります。

特に、突然発生した強い痛みや外傷後の痛みなどを、「運動すれば良くなるはず」と自己判断するのはおすすめできません。

運動には痛みを軽減する可能性がありますが、「運動=万能な治療」ではありません。
ここを区別することが重要です。


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痛みがあるときは「休む・続ける」の2択にしない

では、運動中に腰や膝などに軽い痛みや違和感が出たら、どうすればよいのでしょうか。

私がトレーニングを考えるときに大切にしているのは、

「やる・やらない」ではなく「負荷を調整できないか」と考えることです。

①いつもの運動を少し軽くする

たとえば、普段30分ウォーキングしている人なら、

30分 → 10〜15分

に短くしてみる方法があります。

筋トレなら、

  • 重量を軽くする
  • 回数を減らす
  • セット数を減らす
  • 動かす範囲を小さくする

といった調整が可能です。

「いつも通りできない=運動できない」ではありません。

100か0ではなく、今日は40~60にする。
この考え方を持っておくと、運動を続けやすくなります。


②痛くない動きを探す

膝に違和感があるからといって、身体すべてを休ませる必要があるとは限りません。

たとえば、

深いスクワットでは痛む

浅くすると大丈夫

長時間歩くと痛む

短時間なら問題ない

下半身運動が難しい

上半身は問題なく動かせる

ということもあります。

もちろん、原因によっては運動自体を控える必要があります。

しかし、医療的な問題が否定されている場合は、「できない動き」より「できる動き」を探すという発想も選択肢になります。


③翌日の状態まで確認する

運動中だけで判断しないことも重要です。

運動した直後は大丈夫でも、数時間後や翌日に痛みが大きく悪化することがあります。

その場合は、負荷が強すぎた可能性があります。

逆に、軽い運動をしても状態が悪化せず、普段通り生活できているのであれば、その運動量が一つの目安になります。

運動を再開するときは、少なめから始める → 身体の反応を見る → 問題なければ少しずつ増やすという流れがおすすめです。


こんなときは運動より医療機関への相談を優先

「運動で様子を見てよい痛み」と「医療評価を優先すべき痛み」を、一般の人が完全に見分けることはできません。

特に、

  • 転倒・衝突など明確な外傷後に強く痛む
  • 痛みが急激に強くなった
  • 強い腫れ・変形がある
  • 手足に強いしびれや力の入りにくさがある
  • 発熱など全身症状を伴う
  • 安静にしていても強く痛む
  • 痛みが長期間続いている
  • 日常生活に大きな支障が出ている

といった場合は、無理に運動で解決しようとせず、医療機関に相談してください。

「これくらいなら大丈夫だろう」と自己判断して無理を続ける必要もありません。
迷った場合は、整形外科などで原因を確認してから運動を始めるほうが安心です。


40〜50代こそ「負荷を調整して動く」という選択肢を

40〜50代になると、

  • 「昔は何ともなかったのに、最近は膝が気になる」
  • 「久しぶりに運動したら腰に違和感が出た」

といった経験も増えてきます。

そこで毎回、痛い → 完全に休む → 良くなったら急に元の運動に戻るを繰り返していると、運動習慣を作ることが難しくなります。

大切なのは、その日の身体に合わせて運動を調整する能力を身につけること

  • ウォーキング30分が難しいなら10分にする。
  • スクワット10回が難しいなら5回にする。
  • 深くしゃがむと痛むなら、動かす範囲を小さくする。
  • それでも痛むなら別の運動に変える。
  • そして、心配な痛みなら医療機関へ相談する。

これも立派な「運動習慣」です。

一生動ける体をつくるために必要なのは、毎回完璧なトレーニングをすることではありません。
自分の身体の状態に合わせて、無理なく続けることです。


よくある質問

腰が痛いときもウォーキングして大丈夫ですか?

腰痛の原因や症状によるため、一律には判断できません。

慢性的な腰痛では運動が役立つケースがありますが、強い痛みや神経症状などがある場合は医療評価が必要です。

まずは原因を確認し、運動可能な状態であれば短時間のウォーキングなどから試していきましょう。

運動中に少し痛みがあっても続けていいですか?

「少しなら必ず大丈夫」という基準はありません。

痛みの種類や原因によって判断が異なるためです。

痛みが増えていく、動き方が変わるほど痛む、運動後や翌日に大きく悪化するといった場合は負荷を見直してください。

心配な場合は医師や理学療法士など専門家に相談しましょう。

痛みを減らすには筋トレと有酸素運動のどちらがいいですか?

2026年のアンブレラレビューでは、有酸素運動、筋力トレーニング、ヨガ、ピラティス、太極拳など、複数の運動で痛みの軽減効果が確認されています。

そのため、「すべての人にこの運動が一番」とは言えません。

痛みの原因や体力、好みなどを考慮し、無理なく続けられる運動を選ぶことが重要です。


まとめ 体育教師×トレーナーとしての結論

今回、最も伝えたいことは、「痛いなら休めばいい」でも「痛くても運動すればいい」でもないということです。

2026年に発表された大規模研究では、運動がさまざまな痛みを軽減する可能性が改めて示されました。

一方で、すべての痛みに同じ運動が有効なわけではありません。

私なら、痛みがある場合は次の順番で考えます。

①危険な症状がないか確認する

②医療機関での評価が必要か考える

③問題がなければ、できる運動を探す

④負荷を下げて試す

⑤運動後・翌日の反応を確認する


重要なのは、「痛いから全部休む」ではなく、「今の身体で何ならできるだろう?」と考えること。

そして、運動で解決しようとしすぎないことです。

身体の状態に合わせて休む日があってもいい。

軽く動くだけの日があってもいい。

元気な日は少し頑張ってもいい。

そんなふうに運動を調整しながら続けることが、40代、50代、そしてその先も一生動ける体をつくることにつながると考えています(^^)

「これから運動を始めたいけれど、何からやればいいか分からない」という方は、

**「40代からはじめる運動のコツ」**

**「一生動ける体をつくる完全ガイド|40代・50代から始める健康づくりの基本」**

を参考にしてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


参考にした公的機関・論文

Singh B, Miatke A, Dumuid D, et al.
The effect of exercise on clinical pain: a systematic umbrella review and meta-meta-analysis.
PAIN Reports. 2026;11(4).
doi:10.1097/PR9.0000000000001455

  • 157件のシステマティックレビュー
  • 2,736件のRCT
  • 221,279人
  • 運動による疼痛軽減:SMD −0.59(95%CI −0.65〜−0.53)
  • GRADEによるエビデンス確実性:中等度

National Institute for Health and Care Excellence(NICE)
Chronic pain (primary and secondary) in over 16s: assessment of all chronic pain and management of chronic primary pain. NG193.

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